「手続き」について

失敗しない事業目的の決め方は?

事業目的には、現在だけでなく将来の事業も記載し、許認可に必要な記載は必ず盛り込みます。幅広い記載が認められますが、数は5~10個ぐらいにまとめるのがコツです。

「事業目的」とは、その会社で行なう事業の内容のことです。大きく「現在の事業」と「将来の事業」の2点を盛り込んでおきましょう。

あなたは、何かの事業を行なうために会社を立ち上げるはずです。そのすぐ始める現在の事業をまずは、掲げておく必要があります。 さらに、すぐに事業を開始する予定はなくても、将来的に展開を考えている事業があれば、それについても掲げておくと良いです。事業目的に書かれているすべての事業を設立と同時に始めなければいけないわけではありません。将来的に考えている事業についても最初の段階で掲げておけば、その事業を始める際に、事業目的の変更などを行なう必要はなくなり時間と費用が節約できるのです。 もし記載した事業を始めることができなかったとしても、問題はありません。定款の事業目的に記載があるからと言って、必ずその事業を行わないといけないということではないからです。

また、事業を行なうにあたって許認可が必要な業種については、忘れずに事業目的に盛り込んでください。具体的には、建設業(500万円以上の工事を行なう場合)、宅地建物取引業、運送業、古物商、労働者派遣事業、飲食業、倉庫業、旅行業などには許可や届出が必要とされています。 このような許認可にあたっては、会社の事業目的にその業種の記載があることが条件とされていることが多いのです。そのため、もし申請業種の記載がないと、許認可申請時に、時間と費用をかけて事業目的の変更を行なわなければならないこともあります。

次に、事業目的の実際の記載の仕方です。 会社法施行前までは、事業目的の記載の仕方にも細かなルールがあり、具体的な表現を求められていました。現在では、「販売業」、「マーケティング業」などといった一見、抽象的で、以前ならば認められていなかった表現でも認められている例があります。一般的な業務であれば、かなり幅広い表現が認められると考えて結構です。ただし、無償で行なう営利性のない業務、日本語として意味が通じない不明確な業務などは認められませんので、注意する必要があります。

逆に、業界の専門用語など、どこまで詳しく書いてよいのかという問題もあります。1つの基準として、辞書などに記載があれば、認められる可能性は高いと判断して良いでしょう。 しかしながら、最終的な判断は、登記の申請を行なうあなたの会社の所在地を管轄している法務局で判断されます。判断に迷った場合は、自分勝手な判断をせずに、事前に相談しておくことがポイントです。

最後に、事業目的の数については、あまり欲張りすぎないことです。具体的には、5~10個ぐらいを目安に考えてください。いくら記載の事業のすべてを始めなくても良い、といっても、あまりに実態とかけ離れている場合には、取引先や融資担当者などが登記簿謄本を見た時に、あまり良い印象を持たれないことが多いです。

成功する本店所在地の決め方は?

本店所在地は、「実際は、どこに置くか」と「どこに登記するか」が重要です。登記時の記載はある程度自由ですが、事前に貸主の承諾をとるなどの準備も必要です。

「本店所在地」とは、文字通り、会社の本店の置かれる場所のことです。基本的には、実際のビジネスの中心となる営業所・事務所の置かれる場所ですが、実は、必ずしもその場所で営業しなければならないわけではありません。

考え方のポイントは2つです。

  1. 実際のビジネスをどこで展開するか?
  2. 本店所在地をどこにするか?です。

1.「実際のビジネスをどこで展開するか?」については、大きく「自宅を利用する」のと「事務所を借りる」という2つの方法があります。自宅を利用すれば、事務所賃料の節約につながりますが、プライベートとビジネスを分けにくくなったり、応接スペースなどの問題があります。それに対して、事務所を借りれば、事務所賃料の負担は、どうしても大きくなります。 自宅で足りる事業の場合は別ですが、できれば別に事務所を借りる方が、対外的にも信頼性が高まり、よりビジネスに取り組みやすいと言えます。

次に、2.「本店所在地をどこにするか?」ですが、これは前述の通り、必ずしも実際にビジネスを行なう場所と一致していなくても構いません。 例えば、神奈川県にあるあなたの自宅を本店所在地にして、東京都に事務所を借りて、実際の営業は、その事務所で行なうこともできます。事務所を本店所在地とすると、事務所移転のたびに本店移転の登記を行なう必要が出てきます。しかし、自宅を本店所在地とすれば、自宅まで引越をしない限り、事務所の引越に合わせて、わざわざ本店移転の手続をしないで済みます。 事業が軌道に乗ると、会社の成長に合わせ、事務所を移転する機会も増えます。その時に、あまり動かさない自宅を本店所在地にして、事務所移転の際の費用や手間を省くのも1つの方法なのです。

また、逆に、登記簿謄本は誰にでも見ることができるものなので、対外的な信用性を考え、自宅とは異なる場所を本店所在地とするという考え方もあります。 さらに、事務所の位置が都市部に近いことは、ビジネス上も影響を与えます。比較的安価に借りられるレンタルオフィスなどが都市部に集中するのも交通の便が良いというだけではなく、周囲に与えるイメージを考慮している面もあります。東京、大阪、名古屋などその地域における大都市に本店が置かれていることは、信頼性を高めることにつながります。

本店所在地の場所を決めた後で、それをどのように登記するかは、実は、ある程度、自由に決めることができます。例えば、東京都中央区○○1丁目2番3号のABCマンション101号室を本店所在地にする場合、同じ住所でも以下のように記載の仕方を変えることができます。

  1. 部屋番号を書かない  例)東京都中央区○○1丁目2番3号
  2. 部屋番号を書く    例)東京都中央区○○1丁目2番3号-101号室
  3. マンション名まで書く 例)東京都中央区○○1丁目2番3号 ABCマンション101号室

他にも細かく言えば、さらに様々な記載ができます。登記されている本店所在地に郵送物を送って届かないようでは困りますが、そうではない限り、記載の仕方は、あなたの自由にできます。

また、法律上、同一所在地で同一商号の登記は認められていないため、記載の仕方が同一所在地の判断時に影響を与えます。この時は、先に登記されている会社の記載の仕方で結果が変わります。例えば、先に①の状態で登記をされてしまうと、同じ建物で②③の記載をしても同じ商号での登記はできなくなります。また、先の登記が②③の状態であれば、後から登記する会社が異なる部屋番号で②③の登記することは可能です。つまり、最初の会社の登記に部屋番号が付いているか否かで結論が変わってくるのです。

さらに、注意すべきは、貸主の承諾をきちんととってから本店所在地を決めるという点です。自己所有の物件に本店所在地を置くのであれば、特に問題はありませんが、賃貸物件の場合には、注意が必要です。契約の中で、会社の事務所が置かれることが前提になっていれば良いのですが、住居としてのみ使用することを前提に借りているのに、勝手に会社の本店所在地を置いてしまうと、契約違反で解除されても文句は言えません。

そのような事態を避けるために、事前に貸主に話をして、会社を設置することへの承諾を受けておきます。それにより、無用なトラブルを避けることができます。貸主の承諾がとれていない場所を勝手に本店所在地にしてしまうことは、意外に危険なことなのです。

得する決算期の決め方は?

決算月は、税金の面からも基本的には第1期目が長くなるように設定し、場合によって、繁忙期と重ならないように注意してください。

個人事業では、税金を計算する年度の単位は1~12月と決まっています。それに対して、会社の場合、決算月は自由に決めることができます。

決算月は、第1期目ができるだけ長くなるように設定すべきです。つまり、設立日が10月であれば、9月が決算月になるように設定するのです。これには、2つの大きな理由があります。

1つめは、消費税免除の措置が最大限活用できるからです。この措置が受けられるのは、最初の2年間ではなく、2期分です。そのために会社の1期目の長さによって、免除を受けられる期間がかなり変わってきます。

設立日が10月で、決算期が11月の場合、設立した次の月には決算期を迎えることになり、1期目は長くとも2ヶ月ほどになります。それに対して、決算期が9月の場合、次の9月までということになるため、長ければ12ヶ月となり、大きく1期目の長さに差が出ます。

2つめは、決算事務を先に延ばすことができるからです。会社の決算事務のためには、様々な資料をそろえる必要があります。また、税理士に依頼をすれば報酬も発生します。決算事務は、会社にとっては、非常に手間や費用がかかる作業なのです。第1期目が長ければ、その決算事務を少しでも先送りにできます。

さらに、会社設立時だけでなく、その後の会社経営を考えた場合には、決算月は、あなたの会社の繁忙期を避けることも重要です。前述の通り、第1期目はできるだけ長い方が会社にとって有利ですが、場合によっては、会社の繁忙期のとの関係を重視した方が良いこともあるのです。

例えば、運送会社など、毎年、お中元とお歳暮の時期である7月、12月に忙しくなることがわかっていれば、業務の忙しい時期を外して、決算月を決めると決算時の資料集めなども便利です。

このように、繁忙期と決算の準備期間が重ならないように、決算月を設定することが会社に大きな影響を与えることもあります。その際、決算月自体ではなく、決算月終了後、税金申告までの2ヶ月間が準備で忙しくなります。9月を決算月にすると、決算準備で10月、11月が忙しくなります。繁忙期がこの時期に重ならないように決算月を設定することがポイントです。

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