「人」について

株主を誰にすべきか?

経営の安定性を確保するためにも、当初は、株主をあまり増やさず、社長が出資割合の過半数(できれば3分の2)を確保できるようにするのが望ましいです。

株式会社においては、会社に出資をした人が「株主」となり、いわば会社の所有者になります。株式の数に応じて、議決権が与えられるので、お金を多く出資した人ほど強い発言権を手に入れることができます。

あなた1人がすべての出資を行なうのであれば、特に大きな問題はありません。しかし、資本金を大きくするために何人かで出資をして会社をつくるケースもあるでしょう。 この際、少なくとも最初の段階では、過半数の議決権を確保するために、資本金の50%を超える出資をあなた自身が行なうようにすることが望ましいです。そうすることで、株主総会の普通決議をあなたの考えで、コントロールすることができます。

議決権の過半数の確保ができないと、あなたが代表取締役社長であったとしても、その地位は極めて不安定になります。つまり、株主総会において取締役解任の決議などがされてしまう可能性が出てくるのです。

ある程度の規模を持つ会社の場合、すべての議案が、特定の株主の考えのみで決まってしまうのは、独裁的な経営がなされる危険性もあり、あまり良い状況ではありません。しかし、規模の小さい設立当初の段階では、事業を軌道に乗せるために腰を据えた経営の「安定性」が特に必要になります。その「安定性」を確保する意味で、議決権の過半数の確保は重要なのです。

さらに、議決権の3分の2を確保するために、資本金の66.6%を超える出資ができれば、さらに安定性が高まります。議決権の3分の2を確保できれば、株主総会のすべての決議をあなたの考えでコントロールすることができるからです。例えば、定款変更、資本金の増加(募集株式の割当て)、資本金の減少、解散など会社の行く末を左右する決議までも1人で対応できます。

このように、経営の「安定性」を重視する場合、なるべくあなた自身の出資の割合を大きくしていくことが得策です。1人での出資がどうしても難しい場合は仕方ありません。第三者はもちろん、配偶者・親・兄弟姉妹などの親族に出資をしてもらう場合にも、出資割合を確保することは大切です。いくら親族でも経営に対する考えが同じとは限りません。厳しいようですが、それほど経営の「安定性」は会社にとって重要なのです。

トラブルを避ける役員任期の決め方は?

取締役の任期は、多くの会社で2~10年の間で選択できます。実際の期間については、役員メンバーの構成により、1人または親族のみで構成されている場合は長めに、第三者も加わり構成されている場合は短めがお勧めです。

個人事業の場合、一度、事業を始めてしまえば止めるまであなたが代表者であり続けることができます。それに対して、会社の役員には、任期があります。 例えば、取締役であれば2年、監査役であれば4年が原則です(より正確には、その期間より少し長く、決算期後に行なわれる「定時株主総会終結の時まで」となっています。)。そのため、あなた1人の会社で、ずっと取締役を続けることが当然であったとしても、原則2年の任期を迎えてしまえば、再度、選び直して、登記申請を行なう必要があるのです。

しかし、例外として、株式を譲渡する際に承諾が必要という制限が付いている会社(一般的に譲渡制限会社と言います)は、役員の任期を定款で最長10年まで伸ばせるようになっています。これは、役員任期のなかった有限会社と役員任期が2年の株式会社が統合されたために、両者のバランスを図った結果です。

上場会社でない限り、通常は、譲渡制限会社にしますので、特別な事情がなければ、取締役の任期は2年~10年、監査役の任期は4年~10年の間で決められるものと考えてしまって結構です。 なお、取締役は任期を2年より短くすることもできます。監査役は、地位の安定を図るため、4年より短くすることはできません。

役員の任期の決め方については、役員がどのようなメンバーで構成されているのかで判断が変わってきます。

まずは、役員が自分1人もしくは親族のみで構成される場合です。 任期後に再度選び直す時には、法務局への申請が必要となるため、費用も手間もかかります。ですから、あなたと親族のみで役員を構成する場合、任期を長くすれば、より費用・手間を節約することができます。

設立当初は、役員の人数も少なく、いても身内のみであるケースが多いです。もちろん身内だからといって経営上の考えが必ず一致するわけではありません。しかし、ある程度の安定性があることを見越して、任期を長めにし、余計な費用・手間をかけないようにするのも経営上、有効な判断です。

それに対して、役員に親族以外の第三者が加わって構成される場合には、注意が必要です。よくあるのは、第三者を共同経営者として取締役に加えたり、従業員の中でよくやってくれている人を役員に格上げする例です。

しかし、第三者を役員にして、うまくいかなくなってきた場合が問題です。 例えば、経営に対する考え方の相違から、これ以上、いっしょに会社を続けることはできないという事態が生じたとします。この時に、考え方の相違が生じた取締役を任期の途中で解任すること自体は、株主総会の議決を経れば、理論上は可能です。 しかし、解任に「正当な理由」がないと、後になって、「任期の残存期間の役員報酬額」に相当する損害賠償請求がなされる恐れがあります。会社に多大な損害を与えるような行為をしたなどであればともかく、ただ経営上の意見が食い違っているだけで、「正当な理由」とはみなされません。 例えば、役員の任期が、2年であれば、就任1年目に意見が食い違って、解任を強行した場合でも残存期間は1年で済みます。それに対して、任期10年であれば、残存期間は9年となり、損害賠償の金額にも8年分の役員報酬という大きな開きが出てきます。

また、実際には解任しないとしても、任期満了時に株主総会で再任されなければ、自動的に取締役からは外れることになります。解任手続は手間がかかりますし、トラブルを引き起こす可能性もあります。それに対し、任期満了であればトラブルを生じません。この任期満了を活用するには、任期を短くして、任期満了の機会を増やすことが有効です。

第三者を役員のメンバーに入れている場合、これらの事態も想定して、任期を短めに設定しておくと、万が一の時のためには安心です。あなたの会社の状況を考慮して、自社にとって最適な任期を設定しましょう。

知っておきたい助成金とは?

人を雇用することで、ビジネスは大きく加速します。雇用の際には使える助成金がないかチェックし、会社設立時から意識をしておくことが必要です。創業期に良く使われる助成金は3つありますが、それぞれ受給のための条件が異なりますので、注意してください。

1人の時間は1日24時間と限りがあり、どんなに優秀な人でも1人で事業を大きくすることには限界があります。従業員を雇うことで、その限界を超えることができます。

また、複数の人間が集まって事業を行なうことで、それぞれの得意分野の役割分担ができるようになります。営業が得意な人は営業を、企画が得意な人は企画を、という形で、自分の得意領域の能力を最大限に発揮しやすくなるのです。その結果、個々の長所が融合することによって、単純な足し算ではなく「相乗効果」を生み出します。 こうして、従業員を雇うことであなたのビジネスはより加速していきます。

従業員を雇う場合には、まず賃金や労働時間などの労働条件が記載された「雇用契約書」などを作成する必要があります。法律上、重要な労働条件については、書面上、明示しておくことが決められているからです。 さらに、労働者災害補償保険(労災保険)、雇用保険にも加入し、健康保険・厚生年金保険などの社会保険の加入も考えなければなりません。その時に、固定費である従業員に対する給料に加えて、各種保険料の負担が会社の経理に与える影響も事前に検討しておく必要があります。

そして、従業員の雇用を決定した場合、今度は、国から助成金が受給できる可能性が出てきます。「助成金」は、融資と異なり、一定の条件を満たすことで国などからもらえる返済不要のお金のことです。条件を満たすと必ずもらえる厚生労働省管轄の助成金については、人を雇用し、かつ、雇用保険に加入していることが必要です。

創業期によく使われる助成金は、大きく3つあります。助成金によって、会社設立前に行なっておくことや、人を雇用する前に行なっておくことが発生します。つまり、助成金を受給するためには、会社設立前から条件を理解して、準備を進めておく必要があるのです。

1つめは、「中小企業基盤人材確保助成金」です。これは事業の核となる「基盤人材」を雇い入れた時に受給できる助成金です。金額は、基盤人材1名につき140万円(最大は5名で700万円)です。 基盤人材の年収は350万円以上、設備の設置・整備等に250万円以上かけるなど細かな条件がたくさんあります。 人の雇い入れとの関係でのポイントは、会社設立日から6ヶ月以内に各都道府県庁に書類を提出し、その後、独立行政法人雇用・能力開発機構に書類を提出してから、初めて基盤人材を雇わなければ助成金の対象にならない点です。つまり、人を雇う前に2回書類を提出しなければこの助成金はもらえません。

2つめは、「高年齢者等共同就業機会創出助成金」です。これは45歳以上の人が3人集まって、会社をつくり、45歳以上65歳未満の人を雇い入れた時に受給できる助成金です。金額は、支給対象となる経費の2分の1または3分の2(どちらになるかは、その地域の有効求人倍率による)で、500万円が限度額です。なお、平成23年3月31日までに設立された会社の場合、地域に関係なく3分の2で計算して良いとされています。 この助成金にもいくつかの条件がありますが、ポイントは、最初に出資する45歳以上のうちの1名が会社の代表になること、出資者3名の議決権が過半数を占めていることです。つまり、会社設立時の出資者、出資割合、代表取締役に気を遣わなければ、この助成金はもらえません。

3つめは、「受給資格者創業支援助成金」です。これは5年以上雇用保険に加入していた受給資格者が創業し、1年以内に人を雇い入れた時に受給できる助成金です。金額は、創業後3ヶ月以内に支払った経費の3分の1で、150万円が限度額です。1年以内に2名以上雇い入れた場合には50万円の上乗せがあります。 雇用保険の受給資格者であることが条件のため、すでに個人事業を展開している場合には、なかなか利用しにくい助成金です。ポイントは、会社設立前にこの助成金の申請書類の一部を提出しておかなければならない点です。つまり、会社を設立してしまってから、この助成金を申請することはできないということなのです。

このように、助成金を受給するためには、会社設立前から条件を把握して進めていかなければなりません。申請期限なども決まっているため、たった1日でも遅れれば書類を受理してもらえません。従業員を雇用することを決めたら、何らかの助成金の条件を満たせないかチェックしておくと良いでしょう。

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